理科系教育の低迷
日本の国際競争力はIMD(国際経済開発研究所)の調査で年々低下している。それにあわせて”理科離れ”が指摘され、”工学部離れ”も進んでいる。1990年代初頭は66万人にであったが2000年代では38万人で48%減少している。
これは、日本の根幹である、科学技術・イノベーション立国の実現を目指すのでであれば大きな問題となり、将来に大きな危機感を抱かざるを得ない。そのためには、「人」の人材育成に依存するのは当然である。
また、PISA調査によると、科学的リテラシーが2000年2位、2006年では6位、数学的リテラシーでは、2000年1位、2006年10位と年々低下しているが、日本人は高い資質は持ち合わせていると考える。これらの結果を踏まえても、理科離れの人材問題の深刻化は否定できない状況である。そのため、一部においては高い志のもとで、学校や企業など(海陽学園など)ができることを取り組み、理科系人材の問題を解決を図ろうとしている。
しかし、国・学校・企業などが取り組んでも個人の意識が変化しなければ「理科離れ」を脱却することができない。すなわち、国民の意識改革が必要不可欠である。「人生にとって大切なことは、常に高い目標をもち、夢を持ち、その実現に向けて常に努力することであり、決して目前に迫った試験で高得点を取ること、ブランド大学や有名企業に入ることではない。」子供たちが理科系が嫌いになって離れたのではなく、大人達が幼少から提供している教育・社会環境に問題があったと反省するべきである。
国民的意識改革には以下のことが必要であると考える。
「子供の理科離れ」から「大人による理科離し」へと認識を改める。
「理科系人材育成として、「論理的思考力」は必須であるが、これは社会人としても必要であり、そのために理科系教育が有効である。
1.職業によらず、社会人として論理的思考は必須の能力である。
2.論理的思考力の涵養に最も適している教科は理科や数学である。
3.初等中等教育からの知識蓄積だけでなく、体系的な理数教育の実施が重要である。
しかし、これらの問題点を「点」で捉えるのではなく、「面」で捉えていく必要がある。つまり、個人、行政、学校、企業が連携をし、一体となり進めていくことにより、「理科離れ」の子供を減らすことが可能となる。
「ものつくり立国」を目指して初等・中等・高等教育、行政、企業など様々ところで挑戦が始まっている。具体例としては「千葉大学における未来科学者養成講座」「横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校」「大学発教育支援コンソーシアム」「JSR」などである。
それでは、教育現場で個々人に望むものはとは、
中学生には
生きがい(人生の目標)を探そう。
チャレンジ精神を持とう。
”基本” を大切にしよう。人とのつながりを大切にしよう。
本物と接し、本物から学ぼう。身近な人の仕事ぶりを見よう。
今打ち込めることがなければ、まずは勉強しよう。
高校生には
論理的に考える習慣をつけよう。社会常識を身につけよう。
人として基本的な人格を形成しよう。
コミュニケーション能力を磨こう。
生きがい、目標をもち、その先に働くことの意義を見出そう。
グローバルな視点と身近な地域への関心を持とう。
日本語力、英語力(外国語力)を高めよう。
近現代史と全教科にわたる基礎学力を身につけよう。
時事問題への関心を習慣つけよう。
保護者には
世の中が大きく変化していることを理解しよう。
子供に”一人の人間”として接しよう。かわいい子には旅させろ!
子供の個性を尊重しよう。
社会の一員として基本を身につけさせよう。
地域社会や学校活動へ参画し、支援しよう。
子供とのコミュニケーションを増やそう。
感受性・感性を涵養しよう。
「待てない」「褒めない」「やらせない」の3ナイを払拭しよう。
教員には
教育に情熱と使命感をもつ。
子供達に自分の夢を語り、夢を持たせる。
子供の個性を尊重し、考えさせる葦を育てる。
子供達に実体験をさせ、活き活きとした教育を実践する。
保護者と正面から向き合い、家庭と学校の役割について認識を共有する。
外部との接触を通じて自己研鑽する。
「理科系人材問題解決への新たな挑戦」
~論理的思考力のある人材の拡充に向けた初等教育からの意識改革~
2010.6.28 公益社団法人 経済同友会より抜粋
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